16.04.27 筑波実験植物園


ボタン (牡丹)   

     

 

ボタン科ボタン属 

学名 Paeonia suffruticosa

原産地 中国北西部

落葉低木


 中国では花王とも花神とも言われるほど、花の代表的な存在であり、その豪華絢爛なさまは花の王にふさわしい。

ボタンの漢名「牡丹」の字は、明代の「本草綱目」に記されている。それには「牡丹は色丹(あか)なるをもって

上となす。子を結ぶといえども根上に苗を生ず。故にこれを牡(おす)という」と書かれているという。

つまり、赤色の品種が最上品であり、子どもは必ずしも同じ花にならないので、株分けによって増やさなければならない。

それを子ができぬオスということから、牡丹の名がついたという。

最初は薬用として知られていたが、隋の時代6世紀にはすでに観賞用としての栽培が始まり、唐の時代に絶頂を極めた。

時代は変われど、ボタン人気は衰えず、長い間中国の国花として愛されてきた。1929年に国花はウメに

変更されてしまったが、現在にいたってもボタン栽培は盛んであるという。

日本に渡来したのは、奈良時代、聖武天皇のころだとも、空海が中国より持ち帰ったとも言われているが、

少なくとも10世紀には伝わっていたらしい。室町時代にはすでに栽培されていて、江戸時代には流行の花となる。

元禄時代の「花壇地錦抄」にはじつに339種もの品種が載っている。現代でも各地にボタン園が開かれ、

花の時期には多くの観光客で賑わう。まだまだ花の王として君臨しそうな気配である。

薬用としてのボタンは、その根の皮を牡丹皮(ぼたんぴ)といい、漢方では鎮痛、消炎、浄血に利用するという。

この皮にはペオノールという配糖体が含まれている。

この豪華な花を家庭でもぜひ観賞したいものだが、栽培には少々コツがいる。

まず、植え付けの時期が変わっていて、通常落葉樹は葉が落ちている冬期に移植をするのが普通だが、ボタンは

根が動き出すのが早く、落葉する前の10月の時期が最良とされている。

園芸店で売られているボタンの根巻きの苗は、通常シャクヤクの台木に接ぎ木してある苗である。

驚いたことに、ボタンはシャクヤクという草に木を接いでいるのである。これはシャクヤクの根には草ながら

形成層があり、ここに接げば活着し、ボタンの生育も速くなるためであるという理由があるというが、なんとも

不思議な話である。ともあれ、シャクヤクの台木は2〜3年もすると機能を失うので、接目からいち早く

ボタン自身の根を出させなくてはならない。そのため、接目より上に土を盛り、必要とあらば接目を針金で

しばるとよいという。ボタンは冷涼な地域の植物であるため、夏の高温多湿は大敵である。

なるべく水はけのよい土壌に植えて、根によく呼吸させ、直射日光に当てないような工夫が必要である。