13.5.8 東京都薬用植物園
ヒナゲシ (雛芥子)
別名 コモン・ポピー
ケシ科ケシ属
学名 Papaver rhoeas
原産地 ヨーロッパ
一年草
日本では花壇に人気の草花だが、ヨーロッパでは畑などに普通に
はえる雑草の一種である。ヒナゲシの名は、ケシに似て全体的に
かわいらしいからだろう。葉は羽状に切れ込み、全体的に毛が多い。
初めうつむきかげんに蕾をもたげ、咲くときに上向きになる。
開花と同時に包んでいた萼は離れて落ちる。花びらはまるで薄い紙の
ような質感をもつ。弁質は薄く、風に容易になびく。
雄しべは多数で、黒色。雌しべは膨らんでいて放射状の柱頭をもつ。
花後に果実が膨らむが、アヘンをとるケシのように大きくは膨らまない。
アヘン成分は含まれないので、日本でも広く栽培されている。
日本だと花壇を飾るやさしい雰囲気をもつ草花として好まれるが、
原産地のヨーロッパでは、戦争の後にいっせいに咲く花として知られている。
戦争で使われる砲弾が地面に被弾して穴を開けると、土が掘り返され、
その土の中に埋まっていたヒナゲシの種子がいっせいに発芽するそうだ。
先の大戦の後は、ヨーロッパ各地の地面をヒナゲシの花が真っ赤に染めたという。
土の中で時期が来るまで発芽をまつ性質は、雑草の特徴的な性質だが、
人々の目にこの花畑はどういう風に映ったのだろうか。