03.05.07 千代田区

17.05.10 小石川植物園


キリ (桐)      

 

 

キリ科(ゴマノハグサ科)キリ属 

学名 Paulownia tomentosa

原産地 本州、九州、朝鮮(鬱陵島)

落葉高木


 高級箪笥の材料や、箱材として有名な木だが、実際の姿を知っている人は

どれほどいるだろう。そのキリの花が東京のど真ん中、秋葉原で写真のように

見事な花を咲かせていた。キリは高級木材として知られていることは先に述べたが、

花の美しさも特徴の一つであると思う。大きな薄紫色の花は、満開時には目をみはる

ほどの魅力を見せるが、惜しむらくは短命で、すぐにばらばらと落ちてしまう。

反面、蕾の期間は長く、前年の葉の落ちる時にはすでにできあがっている。

この花の美しさを観賞用として見せている場所があまりないというのが不思議である。

植物園でも、コレクションの1つとして植えてあるが、高い木の上で花が咲いている

のを下からかろうじて眺めるということが多い。目の前で見れるように仕立てることは

できないのだろうか。

 秋葉原のキリは、橋のたもとに取り残されているように生えていて、花時には橋の高い

位置から見られるので、少し遠いが花を目の高さで鑑賞できる。人がとても多く通る

ところなのだが、花に気をとめる人はまったくいない。こうして、都会の真ん中でも、

観察できる貴重な植物がまれにあるのである。それを探すのもまた面白い。

残念ながら2022年現在では見られないものとなった。

キリは、箪笥、箱などの他、下駄、琴、棺桶の材料としてもよく使われる。材に狂いが

なく、とても軽く、木目も美しい。空気中の乾湿を調節する性質があり、箪笥は水没

しても密着度が高まり、中の衣類を守るという。

 分類学上の位置はなかなか難しく、古い図鑑ではノウゼンカズラ科とされていたり、

その後、ゴマノハグサ科とされたりしていたが、最新のDNA解析によるAPG分類により

キリ科として独立することとなった。ようやく分類上の位置にめどがたったようである。

キリの名は、苗を育てるとき、いったん根元で切ることから名付けられたとも言われている。

根元で切って、そこから生える勢いのいいまっすぐな苗を育てると、良い材のものが

できるという。女の子が産まれるとこのキリの苗を植える習慣がある。その子が成長して

お嫁さんになったころにちょうど材として利用できるほどの大きさになるという。成長の

早い木でもある。