04.7.25 国営武蔵丘陵森林公園


ヤマユリ (山百合)

     

     

 

ユリ科ユリ属 

学名 Lilium auratum

原産地 本州(近畿地方以北)

多年草


起伏の多い山地の斜面などに生える多年草。 地下深くには鱗片が多重に重なった鱗茎がある。

背丈は1メートル以上になり、10センチ以上もある大輪の花を咲かせる。

花は見事な造形で、大きな花弁はフリルをともない、ゆったりと反る。 花弁は白地に、黄色い線がはいり、赤色の点を

ちりばめる複雑な色合い。 花の真ん中からは細長い柄の雄しべと雌しべが伸びていて、雄しべの先には鮮やかな赤色の

葯がついている。 花は形だけでも豪華だが、それに加え強く甘い香りがあり、漂う香りで存在がわかるほどである。

この花の価値が認識されたのは、実は原産地である日本でではなく、遠くヨーロッパでのことである。

日本より紹介されたこの花は、驚嘆とともにヨーロッパの園芸を加熱させた。 このような豪華な花が野生で咲いている

事実に、はじめヨーロッパの人たちは信じられなかったらしい。 それまでヨーロッパにもユリはあった。

マドンナリリーと呼ばれるユリで、真っ白い花を穂状に咲かせる。 しかし花形はむしろ端正で、清楚なイメージはあるが、

豪華さは控えめである。 それに比べ、ヤマユリのむせ返るほどの妖艶さは、圧倒的な迫力をもっていた。

園芸家らが熱狂するのも無理からぬ話である。 しかし、ヤマユリには栽培上大きな弱点があった。

ウイルス病に極端に弱いのである。 導入されたヤマユリはこの病気によってことごとく枯れていったという。

しかしそれでも諦められないほどの魅力がこのユリにはあった。 そしてついには現在のユリの主流を占める

オリエンタルハイブリッドができ上がった。 ヤマユリにカノコユリなど各種のユリをかけ合わせ、より花色のバリエーションを

広げ、強い香りも残し、病気にも強い品種ができあがっていった。 日本から遥かヨーロッパに輸出されたユリは、

ゴージャスな花群として日本に逆輸入されることになった。 今、切り花に鉢花に大人気の「カサブランカ」は、確実に

このヤマユリの血を受け継いでいる。 そういう意味で現在の園芸史に残る種であり、日本が世界に誇る野生植物の

一つであることに疑う余地はない。 しかし、昔ならどこの山にも見られたこのヤマユリも、最近の開発と盗掘の波におされ

確実に数を減らしている。 このユリが当たり前に咲く環境を、はやく取り戻してほしいものである。